「シトラスリボン・プロジェクトに力を貸してくれませんか?」地元の保護者仲間から声をかけられたのは、愛媛県内でも感染者が確認され、じわじわと重い空気が広がり始めた頃でした。
私は東温市で運送会社を経営していて、当時は、外出自粛によって宅配件数が急増。その一方で、お届け先で「敷地内に入らないで」「汚いからインターフォンに触らないで」と嫌な顔をされたり、時には消毒液を吹き付けられたり、信じられないような出来事に遭遇していました。そんな中でしたから、心無い言動に傷つき、日々疲弊してゆく社員たちを守るためにも、また、地域にあたたかな心を取り戻すためにも、プロジェクトへの参加を決めました。
「ただいま・おかえりと言いあえるまちに」と静かに宣言する方法として思い浮かんだのは、車に貼るステッカーを広げることでした。まず200枚制作し、地域の仲間に呼びかけたところ、すぐになくなり、噂を聞いた県内のPTA仲間から次々と問い合わせの連絡が届きました。「家庭」「地域」「職場・学校」を結ぶ三つの輪が「PTA活動でいつもうったえていることと一緒だ!」と、喜んで協力を申し出てくれたのだと思います。
どれだけ増産しても足りなくなる勢いに驚きながら、このプロジェクトはみんなが待ち望んでいたものだと実感しました。未曽有のウィルスの脅威を前に、誰もが優しい気持ちでいたかったのだと思います。
後日、私をプロジェクトに誘った理由を「学校臨時休業中、留守番をする子どもたちの不安な気持ちをほぐそうと、宅配しながら明るく声をかけ続けてくれた松本さんだからこそ、たくさんの人に優しさを届けてくれると思ったから」と聞かされました。地元では、この3年間たくさんの行事が中止となり、伝統・伝承が途絶えそうな危機感を覚えています。
もう一度つながりを取り戻すために、プロジェクトに参加できたことへの感謝を込めて、地域にあたたかな気持ちを届け続けます!