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メンバーのふりかえり / 柴崎あい より

新型コロナ感染症が広がりはじめた当時、わたしは地元の小さな女子大学に勤務していました。大学の臨時休業期間、学生の声が聞こえなくなったキャンパスの寒々しさを今でもはっきりと覚えています。その頃の会議で、教育の保障や学生たちの不安を思って沈み込む先生方に、シトラスリボンの話を伝えました。すると、「大事な活動だから、教員でリボンを作り、学生たちにメッセージを送ろう!」ということに。紐結びに苦戦しながら、できあがったリボンを見せ合う先生方の表情は、久しぶりに明るいものでした。

対面授業が再開してすぐ、被災地支援ボランティア団体の代表の学生が、思い悩んだ表情で研究室を訪ねてきました。熊本地震以降、被災地訪問を続けてきたのが、コロナ禍で「なにもできない」ことに、歯がゆさを感じたようです。わたしは、教員が学生を想って結んだシトラスリボンの話をして、「つながり続ける方法は必ずあるはず」と励ましました。

数日後、学生から「今年はクリスマス・カードを贈って、『忘れていない』という気持ちを伝えたい」と報告がありました。サークル活動が禁止され、集まることができないため、カードは、図案デザイン→刺繍→ポップアップカードに仕上げる、と引き継いで、一枚ずつ作ります。部屋をのぞくと、制作途中のカードと「次の人へ」と託す小さなメモ、時には飴やチョコが添えてあって、工夫を凝らしたあたたかなつながり方に、涙がこぼれそうになりました。

新型コロナ感染症は、つながり方を見つめ直す機会だったと感じています。つながり方を見つめ直すことで、つながりたいと願う気持ちのはじまりを思い出すことができました。

わたしは今、学校と地域をつなぐ「地域コーディネーター」として活動しています。コロナ禍だからこそ、つながる・つなげることを、あきらめずに。鞄に揺れるシトラスリボンは、「三つの輪をしっかりと結べているか」と、わたしに問いかけ続けます。

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