私が人前に出るときに身に着けているシトラスリボン。
結び目の中央にさした真珠のピンブローチは、亡父からの最後のプレゼントです。
父の病気発覚後に家族の恒例行事となった「忘年会ランチ」の道すがら、
銀座で買ってくれたものでした。
主役の「リボン」は、「龍工房」さん特製の「東京組紐」。
2020年春、プロジェクト発足から日も浅い頃に贈っていただいた、
計110mにも及ぶ組紐の一部です。
四代目ご当主の呼びかけに応えて西予市野村シルク博物館から
寄贈された「伊予生糸(いよいと)」と、
工房オリジナルの蓄光糸が艶めくリボンは、
地域を越えた「善意のリレー」と職人の手仕事の賜物です。
活動開始から約2年半、このリボンとともに様々な場に出向きました。
中でも印象深いもののひとつに、長野県・佐久総合病院での
「農村医学夏季大学講座」があります。
同じ年の講師のおひとりは「ペシャワール会」の事務局長さん
(直接お会いは出来ませんでしたが)。
同会の創始者である故・中村哲医師は、医師だった亡父と大学の一学年違い、
私にとっても高校の大先輩に当たります。
道中、コロナ禍発生後初のフライト(「共感者」でもあるJALさん!)で、
ふと拡げた機内誌に「龍工房」さんの記事を発見したことも、嬉しい偶然でした。
人々が集い、つながることを阻むコロナ禍にあって、
シトラスリボンプロジェクトは、
時に思いもよらないご縁を結んでくれます。
「シトラスリボン委員会」をつくりたい!という小学生、
リボンを結んで病院に寄贈する企画を立てた自助グループの皆さん…
私がふだんバッグ類にさげているリボンにも
それぞれ思い出がこもっています。
でも、いちばんの望みは「いつかリボンが不要になる日」の到来。
酷使するうちに少し歪んでしまったブローチを修理に出すタイミングをはかりつつ、
一時は保健所長を務めていた亡父にも背中を押されつつ、
出来ることをほんの「ちょびっと」続けていきます。